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終わりから始める@美郷町

おわり

その日私は自分の人生に終止符を打つことを決めていた。自分の生きている意味が分からず、ただそこには空虚な肉の塊があった。どれだけ大切にしてくれる人がいたとしても変わらず孤独であることを憂いている自分が常にいることに気づいていたのだ。

意識が朦朧としながらも、自分の首を絞める手が疲れふと離すと、「どこかへ逃げよう」という気持ちが芽生えた。どこかったってどこへ逃げよう。誰にも見つからないくらい遠いところがいい。なんなら興味のあった農業ができるところがいい。そしてどうせなら自分の行ったことがないところがいい。そんなわけで、私は美郷町のこの山体験を見つけたのである。

そんなこのプログラム、2週間から体験できるしトマト農家で働いている間は時給が出るし住居には何でも揃っておりなんだか私にはあっているかも、と希望を抱いた。「もし本当にやることになったらどうしよう、ちゃんとできるだろうか」という不安とも戦いながらとりあえず応募してみた。

そもそも、私という人物には常に極度の不安とあきらめ、若干の絶望が付き纏う。美郷町で知り合った人たちが自分に落胆するまでどのくらいかかるのか、うまく自分を取り繕わないと関わってくれさえしないだろう、私をよく採用してくれたな、そんな考えを持ちながら島根へ向かうバスに乗っていた。

自己紹介

美郷町編をお届けする前に、まず私の紹介をしようと思う。
平山柚花です。
現在20歳で、休学しながらゆったり過ごしている。
大学の学問や人間関係に囚われたくなく、2024年度1年間の休学を決意した。行きたいところに行くし休みたいと思ったら休むし、自分の好きなように生きている。
日本国内をうろうろする時もあるし海外に出向くときもある。とりあえず自由なのが私である。

高校までは勉強ができることがすべてだと思っていたが、大学に入ってからそうではないことを思い知らされ、「自分とは何だろうか」を追求してきた。人と同じになりたくないという幼いころからの強い思いが大学で爆発し、こんな人間になってしまった。


mbti診断というものがあるが、私は何度やってもINFP(仲介者)になる。調べてみると「INFPにとって自己成長とは、自己発見と偽りのないあり方の追及の旅」と書いてあった。なんだか美郷町の山体験はこれに当てはまるような気がした。

あれ、なんの話だっけ。

(私のnoteは読みづらいと思うので覚悟して読んでほしい。)

人生、ミニトマト農家編


島根県松江市についた日、松江駅から美郷町役場まで約2時間、免許を取って約2週間だった私はヘロヘロになりながら運転した。

はじめは、ここにきたことを後悔していた。所謂ホームシックというやつである。終わっていたはずの人生を延長してまでここに来てよかったのか?と何度自分に問うたことか。このプログラムがもし面白くなかったらまたこの前の続きをしよう、と勝手に美郷町にプレッシャーをかける。

ところが、毎日片道30分かけて出勤するトマト農家や美郷町でのゆったりとした時間の流れが、そんな私の考えを変えた(と思う)。

(私にとって)トマト農家の朝は早い。7時には起き、7時15分には家を出る。8時から就業開始し、15時には退勤。芽かき、葉かき、しんどめ、収穫、パック詰め、出荷など家庭菜園だけでは経験できないことをたくさんしたような気がする。
農家さんもあたたかく、安心して就業することができた。

人生、美郷町での休日編

15時に仕事が終わると、そこからは自由時間である。基本的に自分の好きなことをするのだが、私は専ら自然を求めていた。

琴ヶ浜

このあたりの自然はどれも美しく見ごたえがある。
日の入りの時間を狙って車を走らせ、暗くなるまで待つ。じっと太陽を見つめながらこれまでの自分の人生を振り返った。この2週間で、私は何かを変えることができるだろうか?ここに価値を見出すことができるだろうか?不安を抱えながらも、目の前の太陽が自分の家の近くで見えるそれと同じであることに安心し、もう少し頑張ってみようと思えた。

土日休みには出雲や浜田のほうへ向かった。少し走ると景色が変わったり人が増えたりそれぞれの地域に色があって興味深い。

出雲大社
石見畳ヶ浦

どこも車を1時間以上走らせないとたどり着くことができない場所だが、美郷町で暮らしているうちに「30分なら近い」「15分ならすぐ」という車の感覚になってしまった。今までだったら駅から家までの7分も遠いと思っていたのに。

また、ある朝は5時半に起きて雲海を見た。
空気が澄んでいて流れる雲を見つめながら本当にここに来てよかったと、そう思った。

ちなみに私がここへいる期間、他の体験生のように誰かと一緒に住むことはできなかった。期間が合わず誰とも会うことなく基本的にひとりで行動。協力隊の人たちと出かけることもあったが、住居であるシェアハウスにはだれもおらず、大きなトカゲが出ても私は助けを求められずただ叫ぶことしかできなかった。

そして最初に感じていた不安は払拭された。私が取り繕おうがそうしまいが皆さんフラットに接してくれた。見捨てられたらどうしようなど私の捻くれた考えは誰にも打ち明けずこのnoteだけに残しておこうと思う。

はじまり

自分の人生における一瞬の煌めきの中に心地よくゆったりと流れる美郷町での時間がそこにはあった。私の住む東京のように生き急ぐ人もおらず、ドラえもんでいう時門が狭くなったような気がした。

「何かをやり遂げる力」「一歩力」が不足している私にとって今回このプログラムに応募し、やりとげようとしているのは大きな糧であり自分のお守りになる気がする。

そして人生にあきらめを持っていた私だが、まだもう少しだけ楽しいことを追求しようと思う。面白いことを見つけながら、私はまたこの美郷町に帰ってくるだろう。

今回役場の方や地域おこし協力隊の方々にはお世話になりました。
ありがとうございました。ここまで読んでいただき感謝です。