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バリ島で1000年以上の歴史を持つ伝統影絵芝居を美郷町で!

Wayang Kulit(発音:ワヤン・クリッ)を見たことありますか?

Wayang Kulit(発音:ワヤン・クリッ)は見たことありますか?簡単に言うと、影絵芝居です。日本の文楽と同様に人形を使いますが、Kulit(意味:皮)という名前が付くので、牛、または水牛の皮から作った人形です。


1000年以上前の芝居

ワヤン・クリッはインドネシア全国の伝統的なものですが、公演は主にジャワ島とバリ島で行われます。2009年ユネスコの無形文化遺産として正式に登録されました。どれほど昔なものかといいますと、発見された最古の記録によると、10世紀には既にあったらしいです。つまり、1000年以上前の芝居ですね。

芝居のストーリーは
「マハーバーラタ」
パンダワー族とコラワー族の戦いを描く物語

「ラーマーヤナ」
ラーワナに誘拐された妻のシーターを奪還するラーマー王子の物語
この2つほとんどです。ここでちょっとクイズです!

答えは最後に出します。


「ワヤン・トゥンジュク梅田一座」美郷町にて上演

なぜワヤン・クリッの話をするかというと、実は12月16日(土)にみさと館で「ワヤン・トゥンジュク梅田一座」による公演がありました。通常はインドネシアに行かないと見れないものなので、本当に貴重な公演だと思います。
Dalang(発音:ダラン、意味:人形遣い)の梅田英春氏(私のガムランの先生なので、いつも梅田先生と呼んでいます)をはじめとする5名でやっていただきました。

3つの言語で語りや説明を

当日の演目は二部に分かれどちらもマハーバーラタからです。

① ビマの鬼退治(第一部)

ある村のはずれに鬼のバーカとその家来たちが住んでいた。年に一度、村人たちは鬼に山ほどの食べ物、いけにえを捧げなくてはならなかった。パンダワー族の勇者、ビマは村を苦しみから救うため、女性に変装して鬼退治に向かう。

梅田先生による概要

② アルジュナの瞑想(第二部)

パンダワ一族の武将アルジュナは、来るべきコラワ一族との大戦争に備え、崇高なる神より天界の武器を賜るためにインドラキラの森で瞑想を行う。ところが、その瞑想を阻止しようとする魔物が巨大な猪となって、アルジュナに襲いかかる。さてアルジュナの運命はいかに…。

梅田先生による概要

二部ともバリスタイルで行われましたが、日本語、インドネシア語、バリ語、3つの言語で梅田先生がすらすらと語ってくれました。説明や語りがわかりやすくて、戦いシーンの時に迫力もあって、お笑いシーンのユーモアセンスも抜群でした。最初から最後まで見たかったですが、仕事があったのでそれぞれ演目の後半だけ見ていました。それでも色々すごすぎて、梅田先生のファンになっちゃいました。

から見るとこういう感じですが。。。
はこういう感じです。私でもこのスクリーンの裏の様子を見るのは初めてです。

ジャワ島に生まれ育った私ですが、正直この公演を見る前にワヤン・クリッを見たことがあるのはたった1回だけです(ジャワスタイル)。簡単に見られないものではなく、ただただ私が調べようともせず、行こうともしなかったからです(自分の国の文化を知ろうともしなかったので、この記事を書きながら反省中)。
でも、マハーバーラタ、ラーマーヤナなどは休日に父に最後まで読ませられたので、ある程度ストーリーについては知っています。忘れた部分のほうが多い気がしますが。。梅田先生からパンダワークイズを出された時に、答えることができました(父に感謝です)。

ジャワ島とバリ島のワヤン・クリッの違いは?

ところで、ジャワ島とバリ島のワヤン・クリッって全く違うの?というと素人の意見で申し訳ないですが、ストーリーはそんなに違わないような気がします。
しかし、スクリーンの大きさ、人形の形、サイド・キャラクター、役割分担、演奏の面には違いを感じました。人形の影が映るスクリーンですが、気のせいか、ジャワ島のワヤン・クリッのほうが大きい気がします。

ジャワ島のワヤン・クリッの人形
鼻や首付近の飾りなど全体的に尖っていますね

バリ島のワヤン・クリッの人形のもジャワ島の人形ほど尖っていないなと思います。バリ島の人形のほうが鼻が丸くて可愛い感じですね。(笑)
Kayonan(発音:カヨナン、ジャワ島ではグヌンガンと呼び、ストーリーが始まる前に、終わった時などに出てくるワヤン)の上のところも真ん丸くて、こちらも尖っていないですね。

バリ島のワヤン・クリッの人形
全体的に角がなく丸くて可愛いです

今回のサイド・キャラクターを少し紹介します

ワヤンクリッのよくある展開として、4人グループ(賑やかし役のような存在)が登場します。
私の知っているジャワ島のワヤンクリッは親子のキャラクターに対して、バリ島は違う家系の従兄弟が登場していました。

4人グループのことをジャワ島では『プノカワン』
バリ島では『プナサル』と呼ぶそうです

どちらのワヤンにおいてもこの4人のキャラクターが登場すると、この後面白い話があるということです。 

ワヤン・クリッには語りはもちろん、歌もあります。ジャワ島のワヤン・クリッにはSinden(発音:シンデン)というオペラ歌手のような女性の方がいますが(オペラと同じぐらい高い声で歌っています)、そういうのはバリ島のワヤン・クリッにはいなくて、人形操作、語り、歌もダラン(人形遣い)が全部やります。忙しそうですごいですよね。

ワヤン・クリッの伴奏であるガムランですが、使われる楽器も違いますね。バリ島のワヤン・クリッではGender Wayang(発音:グンデル・ワヤン)を使っています。ガムラン達人ではないのであまり言い切れないですが、ジャワ島のガムランには「グンデル・ワヤン」またはそれと完全に同じような楽器は少なくとも私は見たことがありません

グンデル・ワヤン

あと、明らかな違いは言語ですね。
ジャワ島のワヤン・クリッだったら、絶対にジャワ語です。
バリ島のワヤン・クリッは絶対にバリ語です。
どちらのダラン(人形遣い)も古代の言語を混ざって語る場合が多々あります。ジャワ語はある程度わかりますが、古代ジャワ語はギブアップですね。。(汗)
ジャワ島のワヤン・クリッを見る時に頭の中は「?」マークだらけでした。(苦笑)
正直、「ワヤン・トゥンジュク梅田一座」の公演のほうが確実にわかりやすかったです。

それでは、最後にクイズの答えを出したいと思います。

マハーバーラタもラーマーヤナもインドの二大叙事詩と称されるそうです。

「え?じゃ、なんでインドネシアのワヤン・クリッに出ているの?」と質問したくなっちゃいますよね。
実は3世紀インドからヒンドゥー教がインドネシア(当時インドネシアという国ありませんでした。)に入っていて、次第にヒンドゥー教の王国がいくつか誕生しました(でも、それもイスラム教がインドネシアに入ってから次第に滅びました)。
そして、歴史の研究結果によると
マハーバーラタ10世紀末から古代ジャワ語
にアレンジする作業が始まって、
ラーマーヤナ9世紀古代ジャワ語になっていたそうです。
そういうこともあって、インドのマハーバーラタとラーマーヤナもいくつかバージョンがありますので、今インドネシアにあるものは本来の物語と違う点が数々あると言われています。


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